活動内容
10.222014
前防災担当内閣府政務官として 「ビートたけしのTVタックル」 に出演しました
政務官を終えたばかりの9月27日、ご存知のとおり、御嶽山が噴火しました。御嶽山には私自身も登頂したことがあり、思い出深い山のひとつですが、それが噴火を起こし、戦後最大の火山災害となるまで被害が拡大しました。
この噴火を受けた緊急企画として、10月13日(月)23時15分放映の「ビートたけしのTVタックル」(テレビ朝日)に前防災担当政務官として出演しました。この番組は毎回、司会のビートたけしさん、阿川佐和子さんをはじめとしたレギュラー陣に、政治家や専門家などが加わって、一つのテーマを徹底討論するという番組です。今回は、「富士山は大丈夫?火山列島ニッポン 緊急検証スペシャル」というテーマで、国民の関心も非常に高いタイムリーな企画だったと思いますが、テレビ番組は制作側の意向や放送時間の関係で編集されていますので、ここでは放送内容の一部を要約し、私の考えを補足してお伝えしたいと思います。
出演者
防災システム研究所所長 山村武彦氏、
地球科学の権威 東京大学大学院教授 ロバート・ゲラー氏
地震・火山学者 武蔵野学院大学特任教授 島村英紀氏
環境考古学者 立命館大学教授 高橋 学氏
松本文明
●日本は110もの活火山がある火山大国
日本には110もの活火山があり、この100年間、大きな噴火が起こっていません。専門家によると、「大噴火」とは東京ドーム250杯分以上の噴出物があるものをいい、今回の御嶽山の噴火は東京ドーム3分の1程度で、まったく規模が違います。御嶽山の噴火は水蒸気爆発であり、規模も小規模なものだったにもかかわらず、死者50人以上の大きな犠牲が出ました。
今後、東日本大震災や南海トラフの活動の影響で、どの活火山がいつ噴火してもおかしくない状況にあるという指摘もあります。
●火山の噴火は予知できないのか?
まず、火山の噴火予知のためには観測が必要です。頻繁に噴火している三原山、大島、桜島などは研究対象としても注目され、観測機器もたくさん付けられるため、小さな予兆を見つけやすいと言えます。
日本の110の活火山のうち47は、24時間の監視対象になっています。御嶽山もそのうちのひとつで、火山性微動の回数や火山性ガスの量などが計測され、そのデータはインターネットを通じてリアルタイムで公表されています。今回の噴火の直前にも火山性微動が観測されていましたが、警報は発令されませんでした。
火山噴火予知連絡会の藤井敏嗣会長は、会見で「我々の火山噴火予知に対するレベルというのはまだそんなもの」と発言し、番組内でもゲラー氏や島村氏などの専門家は、それが極めて難しい、あるいは、ほとんど不可能であると主張しました。
その理由として、「データや経験を噴火予知につなげる理論や方程式が確立されていない」「日本には火山が多過ぎるうえ火山のタイプがそれぞれ異なるためデータの蓄積や知見が少ない」「地震・火山の専門家が20人程度しかおらず、ひとつの火山をずっと見守るホームドクターのような人材を配置できない」など、火山研究の現状を挙げました。
しかし、政府としては、山谷えり子防災担当大臣が発言したとおり、「より精度の高い予測が可能となるよう火山活動の監視体制の強化について検討して行く」考えです。頭から「無理だ」と決め付けて何もしないでいたら、いつまでたっても確立されることはありません。研究への取り組みに一層力を入れていくべきだと考えます。
●5段階の警戒レベルは必要なのか?
御嶽山の噴火の際、警戒レベルは1(平常時)でした。火山専門家は、「確かに火山性微振動が観測された以上、レベルに2に引き上げておけば犠牲を減らせたかもしれないという反省はある。ただし、レベルを引き上げる際の基準が確立されておらず、基本的にヤマ勘、あるいは、経験のレベルになる」と主張しました。
一方、「ハズレてもいいから警報を出すべきだったのでは?」という指摘に対しては、「予知が外れる確率は99%と極めて高く、それを繰り返すと社会は警報を無視するようになる」「津波警報は95%の確率でハズレるから皆、無視するようになった」と主張しました。
このあたりにも予知と警報発令の難しさがあります。私は、全国の火山専門家は、御嶽山の噴火直前に火山性微動が観測されたことは認識しつつも、誰も噴火につながるという確信をもてなかったのだと思います。「噴火の確率が50%ある」と思えば間違いなく誰かが声を上げたはずです。
今後、噴火予知の精度を高めるために、観測機器の整備や専門家の育成、そして、知見を高めて行くしか方法はありません。
また、現状5段階の警戒レベルについては、「入山を許可するか、しないかの2つにすべきではないか?」という意見もありました。私もそのほうがわかりやすくて良いとは思います。ただし、火山と切っても切り離せない温泉などの観光地・景勝地においては、頻繁に入山禁止が発令されれば地域経済にも影響します。この点は、専門家と行政が中心となり地元の方々ともしっかり連携をとりながら検討していくべき課題だと思いますし、そこを訪れる観光客や登山者、つまり国民の皆さんにも十分な理解をいただけるように努力することが必要だと思います。
●大噴火を想定した準備が大切
富士山も活火山ですが、この300年間噴火をしていません。自然科学の考え方からすると、地球が誕生してから46億年ですから、300年などほんの一瞬。つまり、いつ富士山が噴火してもおかしくないということになります。仮に地震予知がめざましく精度を上げたとしても、噴火自体を食い止めることなどできません。私たちが考えなくてはいけないのは、いざ噴火が起こったあとの対処の仕方や準備の検討です。
番組内でも、「火山の噴火と災害の検証は別々に考えるべきだ」(高橋氏)、「発生確率と結果の重大性を勘案して考えていくべき」(山村氏)といった意見が出ました。
政府は2004年に「富士山火山防災マップ」を公表しました。これは1707年の宝永噴火をもとにシミュレーションされたものですが、これによると、噴石の直撃などによる死傷者は最大1万3600人、火山灰や火山礫を吹き上げる大噴火が2週間続き、首都圏は壊滅的な被害を受けると言います。
また、内閣府の予測では、東京都の火山灰の降灰量、1cmの降灰だとしても1782万立法メートル、10tダンプにして205万台が必要になるとされています。番組内でも「とても想像できない」「宝永噴火だけをもとにするのではなく、その倍以上の噴出物が出ている貞観の噴火などいろんな角度から被害を想定すべきだ」「火山の噴火とその前後に起こる大地震をセットにして考えるべきだ」というものまで、様々な意見が出ました。
たしかに富士山が噴火した場合には、交通網やライフラインは麻痺し、精密機械も機能不全となり、通信も途絶えるなど、さまざまな事態が予測されています。しかし、そういう未曾有の事態に対して、「なす術がない」などと諦めてしまうのではなく、「できることは何か?」を考えていくことが大切です。
とにかく命を守る。命を守るためには大噴火や大地震が起きても簡単に倒れない、強靭な都市を作らなくてはなりません。火山の噴火とともに大地震が想定され、さらに大津波が想定されるのではあれば、簡単に飲み込まれない都市を計画することも大切です。でも、それは一気にできることではありません。
電線に火山灰が降り積もったら、その重みで切れてしまいます。その対策としても、私がライフワークにしている「電線の地中化」は非常に有効です。防災の専門家・山村氏が「技術革新を含めた研究を政府が力を入れて支援するなど、まったく何もできないということはないはずだ」と指摘したように、噴火後の対策を強化し、現実的な施策としてどう計画していくかが重要だと考えます。
関連リンク
電柱の地中化の活動はこちら
⇒http://f-matsumoto.net/modules/bulletin/index.php?storytopic=8